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2012年1月

全ての心を濡らすため。



天から垂れた銀の糸

水鏡に泪の雫

その一滴が溢れ出し

静かに心を濡らすだろう


呼び声は

美空の奥から木魂して

震えは畏れと変わるだろう


ただ在るだけの肉塊は

ここぞと命を思いおこし

全ては一つに繋がっていくことを

思い知る


手繰り寄せる慈しみは

手のひらを熱くして

あなたの髪を

頬を

撫でる


我が身を抱きしめた両腕は

世界をも少し暖めて

何ものにも変化する時象は

安息の水になって

また天に還っていく


もう一度

いや

何度でも



全ての心を濡らすために


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通り過ぎたあとに。


通り過ぎたあとに

背中が寒いから

気持ちの温度が

高すぎることを知る


冷たい手のひらを

喉元に押し当てて

息をしよう


必要なのは

氷の沈黙 ではなく 水の静寂

振り返って風を探しても

そこには独りの自分が映るだけ


紅く灯った

小さな自分が映るだけ




泣き声だけが

炎の先を


ちらり


揺らして。

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日常。

いつもと変わらないお正月の味

少しだけ特別な色がしているような朝の空気

今年もまた新年を迎えたこと



そして だからこそ日常というものはナニモノなのかを認識する



老いを重ねる身体

新しく生まれてくる気持ち

決して戻らない時間



星座の形が変わらないという錯覚ほどに

気がつけぬほどにほんの少しづつ


肘が当たった大切なグラスが声を上げる暇もないほど割れる瞬間のように

狼狽え 自分を失うほどに時に激しく



変わっていくから 変わっていくことが日常であるということに

そんな当たり前のことを



これからの日常に僕はついていけるのだろうか?

これからの日常を僕は受け入れていくことができるだろうか?

そして

これからの日常で僕は何を見つけるのだろうか?



新年という人間が作り出した区切りに

間違いなく 新しい日常が始まろうとしている。

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乾いた断末魔。

山を通り抜ける道を歩く

いつもは車で通る道を


鈍った体は自然 傾斜に合わせた呼吸のリズムを作り出す


アスファルトの道の端には薄茶色の落ち葉が吹き寄せられ

それに隠れているのは土に帰れなかった団栗たち


パチリ  パチリ   パチ・・・


無意識にそれを踏んだ時に奏でられる 乾いた断末魔が 

私はいつも何かを踏みつけて歩いていることを

優しく教えてくれる



それでもまた 息を整え

私は歩く

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躊躇い。

暗闇の川に

足の爪先すら浸けるのを躊躇うのは

きっと

その冷たさ故でなく

その流れの早さが見えぬから


潜んでいるのは闇だろうか?

ならば私の同族だ

泳いでいるのは心無いピラニアだろうか?

ならば共に貪り喰らえばいい


私の全てを流れの中に解き放てば

しばらくは私はナニカに変化し泳ぐだろう

だけど


だけど私の全てが削れ溶け その流れそのものになってしまったら

私は一体何処へいってしまうのだろう



尖った石塊が私の足の裏を突き刺す

ここに留まって居る限り その痛みはいつまでも続くだろう



それでも

暗闇の川に

足の爪先すら浸けるのを躊躇うのは

きっと

その流れの早さが見えぬから

聞こえぬ筈の流れ唄が私の心に響いてくるから



それでも いつか



それでも・・・     いつか。

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伝導率。

用意していた言葉は

差し出したときに心ほど大きく伝わらず

その失った分が狼狽えに変わる


予期せぬ言葉は

受けとったときに半分も理解できず

残り半分が纏まろうとしている言葉たちを分解させる


だから私は無口になって

瞳の奥だけが灰黒く濁っていく




無駄になった言葉たちが目尻から溢れれば

それはきっと地面に白い影を落とすだろう

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あるがまま。

歩く

うまく開かない左目を時折薄く開けながら


無心なんか無く

強い自分と 弱い自分が浮き上がってきては

互いの波が打ち消し合う


希望も不安も 強がりも開き直りも 

闇色のオーロラも 視界さえ遮る光の霧も

絶え間なく浮かんでは消えていく


もう そんな心の動きさえ

あるがままに任せてしまおう

曝け出すことでしか進めないのはわかってるんだ


そう何度も心の中で呟いて

右膝の 時に左膝の小さな回転だけを止めぬようにして

ただ

ただ歩く




上手く開けない左目は

右目が疲れきったときに上手に泣いてくれたらいい

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息する。

息することだけが

自分に時を刻んでいく

そんな時間が確かにある


体中の周りの空気さえ

心と一緒に停滞するなかで

ゆるりと張り ゆるりと凹んで

ただ その繰り返しの中に


ただ

息することだけが 在る のだと


まだ 自分は在る のだと。

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えっへん!


『これから』

なんて考えたくないから

『ほんのちょこっと明日』 を思って

「あとは漠然。」 と呟くんだ


それが僕の 【弱さ】 さ


えっへん!



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静かに満ちていく夜。

外灯を避けるように

夜の公園を横切って


顔に当たってくるけど見えないもの

くゆらす煙に

それも灰色に染まっているのだろうか



無言でいるからこそ

満たされていく

僕と外の世界。

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忘れたよ。

忘れたよ

いつが始まりだったのか


忘れたよ

何を探していたのか


忘れたよ

何を見つけたのか


昨日までの僕に必要で

明日からの僕に必要で

でも

今の僕には必要ない



だから

忘れたよ


今は何も伴なうことを望まないから


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莫迦だな。

「莫迦だな・・・」

「莫迦だね。」


「莫迦だよ。」

「うん。」



そうじゃなきゃ捨てられない戯言だってあるよ

今夜は星が近い




さあ 手をつなごう。



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帰る場所。

帰る場所 は

ひとつじゃなくってもいい


でもそこは

必ず人の名前のあるところ


その名前を心の中で呟くと

温かい風が ゆるり と吹いて

自分の根っこが 息するところ


だから

帰るときは 突き動かされるように



僕の心は肺活量が小さくて

もう

いっぱい いっぱい だから





「お帰り」を聞かせて。



 

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月の宮 雪の宮

風ない湖面が鏡となって

森の宮を映し出すように


雪原の晴れた夜にだけ 月の宮は現われて

その真下に 雪の宮は現われる


入ることは叶わない

だからお気に入りの長靴で

韻を踏んだ足跡を

ゆっくり ゆっくり つけながら

雪の宮のまわりを歩こう


吐く息は白い歌になり

月の宮まで届くだろうから

いつか雪の宮の扉が開いて

月の宮までの階段が現われるかもしれない



そしたら溶かしてもらいに行こうよ

少しは僕たちのへそ曲がりも ましになるかもしれないよ。

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壊れたオルゴール。

私の心の歯車は

歯の数が少し人より少なくて

並び方も不揃いで

ちょっと虫歯や歯っ欠けもあるんだよ


だからよく

他人と噛み合わなかったり いつの間にかズレてたり

ときどきビクッて外れてしまう


それでも時にはダレカとさ

一緒に回るひとときがある


それが ふんわり嬉しいんだ

壊れたオルゴールだって 歌は歌えるんだ



下手だから一緒に笑ってよ。

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目を閉じておいでよ。

怖いなら

薄目を開けていればいい

でも出来たら閉じておきな 両目とも


前をむいているはずの目が

後ろから迫ってくる諸事を見ようとするから

怖くなってしまうんだ


安心して目を閉じ待っていていいよ

しばらくしたら諸事は自分を追い越していくから

それから目を開けて その背中を追えばいい


追いついても

置いていかれても

そのほうがよっぽど安心できるだろ


勝手に自分の中で膨らむより

同じ残酷でも

確かに見えているほうが




待つのも追うのも 所詮 刹那 なのだから。

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丸太

ただ一本の丸太になって

雪が降り積もっても

日が照りつけても

朝も 昼も 夜も

ただじっと 木場にプカプカ浮いていたい


時間が私を忘れて通り過ぎてくれたら


そんな気持ちの時だってあるさ。

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音筆。

無理矢理地面に着地したような

心と体のスピードが

ちぐはぐで落ち着かない夜は

せめて綺麗な星空でも見たいけど

それどころか泣きそうな曇り空が不気味に光っている


無機質なホテルの机の前の鏡には

面白くもなさそうな自分が映っているから

なるべく見ないように気をつける


もしも音が世界を色付けるなら

どうやったって安らかな音楽をネットから探し出して

窓を少し開けて そっと垂れ流してやるのに



ねえ

そんな音筆 持ってないかい?

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夢折紙。

その紙を

成りたいものに折ったなら

それが叶うという


あなたは何を折るだろう

鶴?

蛙?

それとも恐竜

はたまた星でも折るのだろうか


私はきっと

人型も折れず

ただ1枚の紙のまま



ただ1枚の紙のまま













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エコー

自分で爪を立て

自分の肌を引っかいているのに

痛いだなんて滑稽だね


誰も傷付けようなんてしていない

ただ自分が勝手に傷ついているんだ


心の空洞に呼魂する

言葉は跳ね返って 何重にもなって

時に自分をゆっくり確実に

壊していく

癒していく


その過程の痛ささえ 痒ささえ

僕を内から形作っていく


だから時に古い引き出しを開けたように

僕になった古い歌が溢れだしてくるんだ


苦くて

切なくて

それでも

大切な


エコー 満ちてゆく

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温かい宝石。

誰もが重ねた時間の中で誰かになってきたんだ

共有してきたものすら取り込んでしまえば形を変え

自分のパズルのピースにはめ込んでしまう


分かり合おうなんて幻想は持たなくていい

同じ魂などありはしないのだから

ただ似ている というつかの間の安心に幸せを感じていればいいじゃないか

違うものをもつ という羨望に自己否定を抱え込んでもいいじゃないか


それの何が悪いんだ

それを自己満足や欺瞞というのなら欺瞞の中にこそ

温かい宝石が隠れている


自分であることを許さなくてもいい

他人であることを悲しまなくていい

それぞれの時にそれぞれの今があるだけだから


自分も他人も認めようと 許そうとしたくても

苦しむのなら どっかでそれは間違ってるんだ


自分の形で笑って怒って泣いて悔しがって呆けて

たったそれだけのことなんだ



さあ温かい宝石を震わせて生きようか

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経た故の輝きもあるのだな。

私の 老い と親の 老い

それを重ねてみられる

もう そんな齢になったのだ


それは


先逝く人達は

私の知らぬ 恐怖と希望

喜びと痛み


何より それぞれ得た いくつかの

自分だけの答え


それを持って

痛々しく輝いている



そんな当たり前のことさえも・・・。


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雨読み。

雨読みが

天から落ちてくる雨粒の

速度と色の数を計測している


空気の洗礼を受け

形をそろえながら でもひと粒一粒の表情が違うことを

じっと観察しながら

この世界で 今日何人の人間が本当の涙を流すのか

雨読みは数えていく


その結果は誰も知ることはない

雨読みはその莫大なデータを公表などしないから

知っても何も変わらないから


ただ どんな雨の日でも

雨読みは街角にそっと立ち

この世の悲しみを数えている



透明な傘が くるり と回る。

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白い絵の具。

日常の

慣れ という白絵の具が

ほんの少しの凸凹を埋め

世界を静かに殺していく


全てが白く死に去って

沈黙だけが満ちるとき

それまでに気が付けるだろうか?


その

ほんの少しの凸凹が

自分の存在の指掛りであることに




大切なものは いつもささやかすぎて

忘れられてしまう


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溢れさせてはいけない。。。

暴れそうな不安を

頭をなでるようにしながら

実は力づくで押さえ込んでる


それは

溢れさせてはいけない想い


それがあなたに届いてしまえば

もう蓋はできず

どちらも苦しさの海に溺れてしまうだろう


つかの間の喜びさえも見つけられずに


だから

長く姿が見えぬ時ほど

宥めるように 脅すように そして忘れるように

時に勘違いだと言い聞かせ

心を蓋を押さえ込むんだ。






僕が僕に課した約束。

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