ジンⅢ
俺はまたマザーに尋ねる。
「ここは?ここで私はなにをすればよいのですか?見たことろ まだ終焉を迎える星には
見受けられませんが。」
「分からぬ。ただ私に分かることは ここにお前は行かなくてはいけないということだけじゃ。
この星が私の祝福の歌を聴いて・・・もう何十億年経ったのか・・・・・・・
まだまだ未熟な星なのだが・・・・」
戸惑いを含んだマザーの思念波が頭の中に響く。
「この星の同朋達がどのようであるかは分からぬ。ただ祝福を受けたものたちであることは
確かなのだ。ジンよ、いつもお前に終焉の歌を、宇宙へ散ってゆく同胞達を我が元に連れ帰って
もらってきたが・・・・この星の同朋達の声はとても小さく、我が耳にはほとんど聞こえてこぬ。
同朋達がどのように人間達とともに生きているのかも分からないのじゃ。
ただ・・・ただ・・・わかるのはお前がこの星に行かなくてはいけない、ということだけ。
どうかジンよ。まずこの星に赴き、この星の同朋達の様子を私に伝えてはくれまいか・・・・」
今までに受けたことがない指令であり、正直俺にも戸惑いはあった。しかしマザーの願いで
ある。その願いに背こうという気はなかった。
「わかりました、マザー。この星に赴き、その見たもの聞いたもの全てを報告いたします。」
もう声ではなかったが、頷くような波動が頭の中に響いた。
「さあ。そうと決まったら行くとするかホール。ん、どうしたホール?」
ホールは少し呆けたような表情で口をパクパクさせている。
「ホール?」
「お、おぉ。そうじゃな。行くとするかの。たまには終わりばかりじゃない生きた星に行くのも
いいもんじゃて。」
そういうとホールはまた甲羅の中に首を引っ込めてしまった。まったく考え事が好きなヤツだ。
俺はまた傘を広げると、傘の内側に広がる宇宙、その中でも小さくとも一際青く輝く星のほうに
向かって身を投げた。
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数瞬後、俺は青く輝く星を足元に見下ろすような形で宇宙空間に姿を現した。ポケットの中を
まさぐるとホールもちゃんといる。俺はしばらくその美しい輝きを見つめていた。
「さて、どうするね?」
ポケットの中からホールが顔を出し俺に尋ねる。
「決まっている。いつまでもここにいても仕方ないだろう。降りるさ。そのために来たんだからな。」
「・・・そうじゃな。ところでジン、すまぬが大気圏突入の際にはしっかり右手でワシを押さえておいて
くれるかの?」
「なんだ、珍しい。ホールがそんなことをいうなんて。何度もそんなことは経験してるじゃないか。
ホールとあろうものが怖気づいたのか?それとももう歳か?」
「うるさいわい!・・・いや、この星を見ていたら いつぞやの星で大気圏突入したときに
海の中に放り出されたことを思い出してな・・・・・。」
「そういえば そんなこともあったな。まぁ、いいじゃないか。どこに放りだされても俺はお前の
場所を感じることができるんだから。」
「しかし、水深1万メートルの海の底で また5年も待ちたくないからのう。とにかく頼んだぞ。」
「わかった、わかった。まったく臆病な亀だよ、お前は」
「亀と言うなというのに!まったく。 まぁええわい。さぁ じゃあ行くとするかの。」
俺は傘を閉じるとそのままその星の重力に導かれるように その星に向かってダイビングを
開始した。大気との摩擦で自分の体が高温を発しているのが分かる。
通常であれば、俺の体はともかく身に着けているものは全て燃えつくされてしまうのだろうが
今の俺の体は俺の周りの含め、俺の中にいるフロウが守ってくれているため 服すら燃える心配はない。
「どうだ?ホール。今回は海に放り出されずに済みそうだぞ。」
ホールの返事は無い。いや、ホールは小さな声でなにかを唱えている。その声に耳を傾けると・・・
「おいっ!ホール!どういうつもりだ!? なぜこんな時に『開放のスペル』を詠唱するっ!」
自分の体から、 エレンが、ソウルが、フレアが、プライが この星の大気の中に散ってゆく。
「おい!ホールなんとか言えよっ!」
俺は慌てて右のポケットからホールを取り出し、そのまま自分の手から離そうとした。しかし 何の力が
働いているのか ホールは自分の右手から離れなかった。そして そのホールの体が今度は銀色に
輝き出す。
「お前、それは俺がお前に記憶を預けるときの・・・・! やめろ、何をするっ!?」
銀色に光った体から首を出し、申し訳なさそうにホールは言った。
「すまんのう・・・・。全てはマザーの心のままに・・・・・」
「マザー!!?」
俺がそう叫んだ瞬間、フロウが地面に激突するのを避けるため俺の周囲に猛烈な圧力で
水蒸気を噴出した。
幾分 落下速度を落としながら それでもかなりの勢いで俺は地面に激突した。
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